leemiyeonのブログ

在日韓国人です。10歳の事故で今は車椅子ですが、楽しく生きたいをモットーに日々奮闘しています。

三島由紀夫

 

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三島由紀夫の作品については、中高生の国語の教科書に「金閣寺」が載っていることが多いと思われるが、私が、初めて中学1年で手にしたときの作品も上記の「金閣寺」であった。

美という固定観念にとらわれた主人公の狂気な行為は、当時の私には衝撃的であり、なぜそのような行動に至ったのか、深く考えさせられた内容であった。

生来の吃音というコンプレックスから、周囲にからかわれ、他人との間に壁を作り、孤独の中で生きる主人公溝口は、自分が美しいものから疎外されていると感じていた。僧侶の父親から金閣寺ほどこの世に美しいものはないと聞かされて育った彼は、その後金閣寺へと修行に出る。彼にとって、その後の人生はより孤独を増す。女性と関係を持とうとしても、金閣の幻想が現れ、邪魔をする。そして、友人鶴川の死、老師との確執を経て、彼は「金閣を焼かねばならぬ」と決意する。常に、彼の頭を、心を支配する金閣は、コンプレックスを抱く美への憎悪の対象であると同時に、生的な美よりも美しい、最上の、絶対的な美を表すものでもあった。その金閣を放火することで、世界を変える、すなわち自分の人生も変わるという信念。燃える金閣を前に、美しい金閣寺を永遠のものにした彼(彼の心象の中における永遠性)は、「生きよう」と決意する。

 

三島由紀夫の作品は読めば読むほど難しい。解釈が幾通りも考えられ、私自身、作者が何を伝えたかったのか、思い悩んでしまうところがある。

 

他に「仮面の告白」や「潮騒」「近代能楽集」「豊饒の海」等読んできたが、硬質で精緻な文章に、これでもかというぐらい難解な用語が出てくるたため、彼の天才的な文章力には毎度感服せざるを得ないのだが、一方で、お前に私が理解できるかというような突き放した冷たさを感じさせる文章でもあり、私は、どうしても好きになれなかった。

 

しかし、三島由紀夫の人生は興味深く、幼年期から詩を書く天才少年、戦後の自国への憂慮、虚弱体質からのボディビルによる肉体改造、楯の会結束、市ヶ谷駐屯地における割腹自決は、高校生になって彼の小説の背景を知ろうと、自分で調べて、勉強した記憶がある。

彼の考える日本の古き良き時代、愛国主義とでもいおうか、その大和魂は、憲法改正自衛隊論、日米安保核武装天皇論、特攻隊等々にも自身の見解が述べられているが、戦前の強い日本、美しい日本と比べ、戦後の日本が、三島からは軟弱な国に見えたのであろう、自決の道を、そして割腹自決を選択した彼に、三島なりの美意識が見える。

 

共感はできないが、彼が自国を憂え、愛してやまなかったという理解は示したい。